新釈諸国話『貧の意地』

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劇団前進座と、声優の関智一さん、置鮎龍太郎さんが出演する朗読劇『貧の意地』観覧のため、東京・吉祥寺の「前進座劇場」に行きました。

お目当ては関さんと置鮎さん…はもとより、前進座の友人はりいこと針谷理繪子さんが、関さんの妻役で出演とのことで、秋田からかけつけてみた次第。

 

あらすじは、

気の弱い貧乏浪人・原田(関さん)がツケの取立てに苦しんでいるところ、女房のお汐(はりいさん)が兄から10両を借りてきて借金を返そうとするが、大金に気が大きくなった原田は近所の貧しい浪人仲間・山崎(置鮎さん)たちを呼んで宴を開く。

宴は盛り上がり、さてお開きにしようとしたところ、金子が1両足りないことがわかり、浪人たちは武士の意地をかけて潔白を証明しようとする。

結局小判は家の隅に落ちていて一件落着と思いきや、お汐も1両を見つけ、小判は合計11両に。原田は誰かが情けをかけたのだろうと余分な1両を返そうとするが、誰も名乗り出ない。意地になった原田は11両全てを手放そうとまで言い出してしまう…。

(『貧の意地』を含む『新釈諸国噺』の原作は、青空文庫で読むことができます

 

朗読劇と言いながら、前進座は歌舞伎役者たちも創立に関わった、歌舞伎もできる劇団です。この劇にも歌舞伎の要素がふんだんに取り入れられ、(朗読だから)台本を持った演者たちが舞台狭しと動き回ります。

傑作だったのは「意地をかけて潔白を証明」のところ。

小判を持っていないことを証明するため、浪人たちが脱ぐ、脱ぐ、脱ぐ。

関さんと置鮎さんももちろん脱ぐ。場内につめかけた関さん・置鮎さんファンの女子達の目を釘付け!

開演前に「撮影はお断りします」ってアナウンスが流れたのは、こういうことか…(ちがう

 

さて。

11両を手放すと言い出した原田に対して、お汐は「なぜ進んで不幸になろうとするのに、いざ幸せが目の前にあると臆病になるのか、幸せになろうとしないのか」と責めます。

人って、不思議なことに、幸せを目の前にすると、意地とか、後ろめたさとか、いろんな理由で幸せになることを拒もうとするもので。特に、去年の3月以降は、そういう風潮が色濃くなったように思います。

 

余分の一両は戸口に置いておき、小判の主はそれぞれ帰る際に持って行こうということで話は落ち着き、浪人たちはそれぞれ帰っていきます。

二人きりになった原田とお汐、原田はよほど懲りたのか、これからは真面目に仕官を目指して貧しさから抜け出そうと決意し、お汐も幸せそうに原田にじゃれつきます。

それが本当に、幸せそうで、お汐のはりいさんもかわいくて。

幸せになれない人、幸せになることをどこかで拒んでいる人に、見て聞いて欲しい話だな、と、心底思いました。

 

面白かったなー!

 

ちなみに前進座劇場は来年1月に閉館します。前進座は続きますが、建てられてから30年を数える劇場に行くチャンスは限られております。

皆様もぜひ前進座とはりいさんをお引き立てのほど、何卒。